ホームへ戻る 感想お待ちしてます(^^)/

いつか来た場所:第8話 [目次に戻る第7話に戻るあとがきに進む]

第8話 「ただいま」

 原っぱ。
 ここから見えるのは木々のみ。建物も電線も視界に入らない。原っぱと森を区切るように、立木が壁を作る。その壁の一ヶ所に人一人が通れるくらいの隙間があった。

【有島美緒】
「子供の頃は、立ったまま通れたのに」

【八木アキト】
「ちょっと待って、引っかかった〜」

 パァァァッ! 木陰を抜け、太陽のまぶしさに一瞬目の前が真っ白になる。視覚が復活し、目に映った風景は住宅街。付近には森も原っぱも、それらが収まりそうな場所も見当たらなかった。

【八木アキト】
「ただいま……だな」

【有島美緒】
「うん。ただいま」

 俺達は世界に挨拶をする。雰囲気でわかる。俺達がいるべき世界だ。

【八木アキト】
「はぁ……一時はもうどうしようかと。長い冒険だったなぁ」

【有島美緒】
「そうね」

【八木アキト】
「…………」

【有島美緒】
「…………」

 私達はどちらからと言わず、繋いだ手を目線の高さにまで上げ……離す。これで私達の冒険は終わった。

【有島美緒】
「これで、二度と会わない事を祈るだけね」

【八木アキト】
「あ、ひでぇ」

【有島美緒】
「引っ越した後、駅前に行く時は気を付けないとなぁ。あの辺、良く行ってるんでしょ? 間違って出くわさないように連絡し合うのはどうかな?(←赤面して伏し目がち)」

【八木アキト】
「あ、そうだな。携帯とメアドでいい? くくくっ」

【有島美緒】
「な、何、笑ってるのよ〜。間違って出くわさない様にだからね!」

【八木アキト】
「はいはい」

【有島美緒】
「ところで……恐くて聞けなかった事があるんだけど」

【八木アキト】
「ああ……実は俺も」

【有島美緒】
「えっと……学校どこ?」

【八木アキト】
「やっぱり、それか……。俺は県立…………」

【有島美緒】
「………………」

【八木アキト】
「………………」

【有島美緒】
「クラス違うように祈ろうね……」

【八木アキト】
「……ああ」

 私達は、
 俺達は、

 ───第二の冒険があるかも知れない事を覚悟した───






 おまけ。
 仙台に飛ばされた俺は有島に電車代を借り、4時間掛かる帰路に就く事となる。

【八木アキト】
「電車は……正午丁度か」

 時計がテッペンの「14」を指す。定時通りに特急は発車した。

★おしまい?★

いつか来た場所:第8話 [目次に戻る第7話に戻るあとがきに進む]

ホームへ戻る 感想お待ちしてます(^^)/