食事を憶えた事により、人形は当たり前に動ける程度の能力を持っている事がわかった。しかし、人形は自らの意志で動こうとはしない。寝かせたらそのまま寝返りすら打たなかった。 生まれたばかりの野生の動物でさえ、自らの脚で立とうとするのに。動物としての本能が欠落しているように感じた。人形が痛みに対し、抗おうとすらしない事を思い出した。 加えて、好奇心という物が欠落しているらしい。何かを教え込むには体に教え込むしかない。私がいくら見本を見せても、人形は見ようとすらしないのだ。 人形の両足を私の両足に載せ、狭い地下室の中をグルグルと歩き回っていた。左右交互に足を出せば歩ける事を教えるためだ。 「……」 人形は相変わらずの無表情である。力の入っていない細い首が、歩を進める毎にカクカクと揺れていた。 「あんよは上手……あんよは上手……」 自然とそんな合いの手を口にしてしまう。道化ぶりがますます板に付いてきた気がする…… |
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