「んー」
 人形は、寝転がっている私の腹の上の乗りもぞもぞと遊んでいる……ように見える。遊んでいるのか、ベットを占領した私に抗議をしているのかは謎である。
 私の腹にぺったりと頬を付け、私の顔を覗いていた。

「ほれほれ。」
 ほっぺをつんつんする。
「んーーーぁ」
 無表情のまま口だけが動く。なんとなく喜んでいるように感じる。そのうち、その喜びを表情で表せるようになるだろう。私は、この人形がだんだん人間らしく成長していく未来を感じていた。

「どうなるのかねぇ。」
 私は人形の髪を弄びながら考えていた。
「お前はクローンなんだよ。」
 人間らしく育つほど、この人形は不幸になるであろう。違法クローン。存在してはいけない人間。この薄暗い地下室から出られない存在。外の世界を知ってはいけない存在である。

「あー」
 人形は、コロリと一回転寝返りを打ち、私の胸まで昇ってきた。難しい顔をしている私を不思議そうに見上げている……ように感じた。
 

 
 


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