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第8話 「ただいま」 原っぱ。 ここから見えるのは木々のみ。建物も電線も視界に入らない。原っぱと森を区切るように、立木が壁を作る。その壁の一ヶ所に人一人が通れるくらいの隙間があった。 【有島美緒】 「子供の頃は、立ったまま通れたのに」 【八木アキト】 「ちょっと待って、引っかかった〜」 パァァァッ! 木陰を抜け、太陽のまぶしさに一瞬目の前が真っ白になる。視覚が復活し、目に映った風景は住宅街。付近には森も原っぱも、それらが収まりそうな場所も見当たらなかった。 【八木アキト】 「ただいま……だな」 【有島美緒】 「うん。ただいま」 俺達は世界に挨拶をする。雰囲気でわかる。俺達がいるべき世界だ。 【八木アキト】 「はぁ……一時はもうどうしようかと。長い冒険だったなぁ」 【有島美緒】 「そうね」 【八木アキト】 「…………」 【有島美緒】 「…………」 私達はどちらからと言わず、繋いだ手を目線の高さにまで上げ……離す。これで私達の冒険は終わった。 【有島美緒】 「これで、二度と会わない事を祈るだけね」 【八木アキト】 「あ、ひでぇ」 【有島美緒】 「引っ越した後、駅前に行く時は気を付けないとなぁ。あの辺、良く行ってるんでしょ? 間違って出くわさないように連絡し合うのはどうかな?(←赤面して伏し目がち)」 【八木アキト】 「あ、そうだな。携帯とメアドでいい? くくくっ」 【有島美緒】 「な、何、笑ってるのよ〜。間違って出くわさない様にだからね!」 【八木アキト】 「はいはい」 【有島美緒】 「ところで……恐くて聞けなかった事があるんだけど」 【八木アキト】 「ああ……実は俺も」 【有島美緒】 「えっと……学校どこ?」 【八木アキト】 「やっぱり、それか……。俺は県立…………」 【有島美緒】 「………………」 【八木アキト】 「………………」 【有島美緒】 「クラス違うように祈ろうね……」 【八木アキト】 「……ああ」 私達は、 俺達は、 ───第二の冒険があるかも知れない事を覚悟した─── おまけ。 仙台に飛ばされた俺は有島に電車代を借り、4時間掛かる帰路に就く事となる。 【八木アキト】 「電車は……正午丁度か」 時計がテッペンの「14」を指す。定時通りに特急は発車した。 ★おしまい?★ |
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